買い手の67%は営業と話さずに買いたい。それでも営業が頼られる場面。
「最近、問い合わせの前に検討がほとんど終わっている気がする」。営業の現場でこう感じることが増えていないでしょうか。調査会社Gartnerが2026年3月に発表したB2B買い手調査では、67%の買い手が「営業担当者を介さない購買体験(rep-free experience)」を好むと回答しました。一見すると営業不要論の根拠に見える数字です。しかし同じGartnerは2026年5月、69%の買い手が「AIで得た情報の検証には営業担当者を頼る」という調査結果も発表しています。本稿ではこの2つの数字を並べて読み、営業の出番がなくなるのではなく「どこに移るのか」を整理します。そのうえで、営業の人数を増やす以外の打ち手として、買い手が自分で検討を進められる環境の整え方を考えます。
67%という数字の中身。2025年調査で買い手の自走はさらに進んだ
まず数字の出どころを正確に押さえます。Gartnerが2025年8月から9月にかけてB2Bの買い手646名を対象に実施した調査(2026年3月発表)では、67%が営業担当者を介さない購買体験を選好しました。同調査では、45%の買い手が直近の購買プロセスでAIツールを利用したとも回答しています。製品の比較、要件の整理、価格相場の把握といった、かつて営業に聞いていたことの多くを、買い手はAIと公開情報で自力で進め始めています。(参照:Gartner「Gartner Sales Survey Finds 67% of B2B Buyers Prefer a Rep-Free Experience」(2026)、Demand Gen Report「Gartner: 67% Of B2B Buyers Prefer A Rep-Free Experience」(2026))
この傾向は一時的なものではありません。前年にあたる2024年8月から9月の調査(買い手632名・2025年6月発表)では、同じ選好を示した買い手は61%でした。年次調査で61%から67%へと、買い手の自走志向は1年で一段進んだことになります。(参照:Gartner「Gartner Sales Survey Finds 61% of B2B Buyers Prefer a Rep-Free Buying Experience」(2025))
もうひとつ重要な知見があります。2025年調査では、購買判断に確信を持てた買い手は、確信の低い買い手に比べて「質の高い購買ができた」と報告する割合が2倍でした。買い手は自走したいだけでなく、自走の先で「この判断で正しいのか」という確信を求めている。この点が、後述する営業の新しい出番につながります。
買い手が避けているのは営業ではなく、的外れな接触
67%という数字を「買い手は営業を嫌っている」と読むのは正確ではありません。手がかりになるのが、2024年調査(2025年6月発表)のもうひとつの結果です。買い手の73%は、自分の状況と無関係な的外れなアウトリーチ(売り込みの電話やメール)をしてくるサプライヤーを、その後の検討から積極的に外すと回答しています。
つまり買い手が拒んでいるのは、営業との対話そのものではなく、「自分の検討段階や課題を踏まえない一方的な接触」です。リストへの一斉架電や、宛名だけ差し替えたテンプレートメールは、成果が出ないだけでなく、候補から外される確率を自ら上げている可能性があります。アウトリーチの量を増やす施策が検討されているなら、この73%は見直しを提案する際の客観的な材料になるはずです。
それでも69%は営業を頼る。出番は「情報提供」から「検証と確信付与」へ
では営業の役割はどこに残るのか。Gartnerが2026年5月に発表した調査結果では、69%の買い手が、AIが生成したインサイト(示唆や推奨)の妥当性を検証するために営業担当者を頼ると回答しています。(参照:Gartner「Gartner Survey Finds 69% of B2B Buyers Turn to Sales Reps to Validate AI-Generated Insights」(2026))
これは前述の45%(直近購買でのAI利用)と地続きの話です。買い手はAIで情報を集められるようになった一方、AIの答えが自社の状況に当てはまるのかまでは確かめられません。「AIはこう言っているが、うちの業界・規模でも本当にそうか」。この問いに答えられる相手として、営業が呼ばれています。(参照:Digital Commerce 360「Gartner: 67% of B2B buyers want rep-free purchasing as AI reshapes sales」(2026))
前段の「確信を持てた買い手は質の高い購買の報告が2倍」という結果と合わせると、構図が見えてきます。情報を渡すだけの営業の出番は減り、買い手が集めた情報を検証し、判断への確信を与える出番が増えている。営業がいらなくなったのではなく、呼ばれるタイミングが購買プロセスの前半から、判断を固める局面へ移ったということです。
日本のB2Bにそのまま当てはまるのか
注意点として、この一連の調査は米国を中心とした海外の買い手が対象であり、対面の関係構築を重んじる日本のB2B商習慣では、数字がそのまま当てはまらない可能性があります。展示会や定期訪問が今も有効に機能している業界は少なくありません。
ただし方向性まで否定するのは早計だと私たちは考えています。日本でも検討初期の情報収集はウェブ検索と資料ダウンロードに移って久しく、生成AIの業務利用も広がっています。「営業に会う前に候補をある程度絞り込む」買い手の行動は、程度の差はあれ日本でも進んでいるとみるのが自然です。海外の数字は予言ではなく、先に進んだ市場で何が起きるかを示す参考値として使うのが現実的です。
営業を増やす以外の選択肢。買い手が自走できる環境を整える
ここからはRespectifyの視点です。買い手の67%が自走を望むなら、売り手の打ち手は「接触量を増やす」ではなく「自走の途中で選ばれる状態を作る」に変わります。商談の質は営業に渡る前、買い手がサイトとコンテンツで検討を進めている段階で大部分が決まる前提に立つ設計です。具体的には次の3点から着手できます。
製品情報・価格感・導入手順を自己完結で読める形にする
買い手が営業に会わずに知りたいのは、機能の一覧よりも「自社の場合どうなるか」です。価格の目安、導入の標準的な手順と期間、よくあるつまずきといった、従来は商談の場で口頭説明されてきた情報をサイト上で読める形にします。ここで効くのが、ベテラン営業の頭の中にある説明の文書化です。「この業界のお客様はまずここを気にする」という暗黙知を買い手が自分で読めるコンテンツに変換する作業は、属人化解消の取り組みとまったく同じ性質を持ちます。買い手の検討動線を前提にしたサイトの構造設計は、買い手が自己完結できるサイト構築で扱っているテーマです。
自走の足跡をCRMで捉え、検証の出番を逃さない
買い手が自走するほど、売り手からは検討の進み具合が見えなくなります。だからこそ、どのページが読まれ、どの資料が落とされたかをCRMで追える状態にしておき、買い手が「人に確かめたい」段階に達したときに、的外れでない接触ができる準備をします。73%が示すとおり、見当違いのタイミングと内容の接触は逆効果だからです。検討状況を捉える計測とリード管理の設計は、検討の足跡をCRMで捉える営業最適化でご相談いただけます。
営業の評価軸を「接触量」から「検証の質」へ寄せる
架電数や訪問数を主指標にしたままでは、現場は73%が嫌う一斉アウトリーチに向かいます。買い手の質問にどれだけ的確に答えられたか、判断材料をどれだけ提供できたかという検証局面の貢献を評価に組み込むことが、69%の期待に応える体制づくりになります。
なお、B2Bの購買が個人ではなくグループで進む構造と、リードを渡す単位の見直しについては、別稿「リードは渡しているのに商談にならない。MQLから買い手グループ単位の連携へ」で扱っています。本稿の「買い手の自走」と合わせて読むと、営業とマーケの接続を見直す論点が揃います。
まとめ
- Gartnerの2025年8〜9月調査(n=646・2026年3月発表)では、B2B買い手の67%が営業を介さない購買体験を選好し、45%が直近の購買でAIを利用していました。前年調査(n=632・2025年6月発表)の61%から自走志向は一段進んでいます。
- ただし買い手が避けるのは営業そのものではなく的外れな接触です。2024年調査では73%が、無関係なアウトリーチをするサプライヤーを検討から外すと回答しています。
- 一方で2026年5月発表の調査では、69%がAI生成インサイトの検証に営業を頼ると回答。営業の出番は情報提供から、検証と確信付与の局面に移っています。
- 米国中心の調査であり日本の商習慣との温度差はありますが、打ち手の方向は共通です。買い手が自走できる情報環境を整え、検討の足跡を捉え、検証の局面で的確に応える体制を作ることが、営業を増やす以外の現実的な選択肢になります。
自社の買い手がどこまで自走できる状態にあるか確かめたい方は、無料相談からお声がけください。