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B2Bの勝率が29%から19%へ。落ちる商談に共通する遅延と決裁者不在。

B2Bの勝率が29%から19%へ。落ちる商談に共通する遅延と決裁者不在。

去年は通っていたはずの商談が、今年は同じように進めても決まらない。受注率が落ちているのに、何が変わったのか説明できない。営業の現場でこうした感覚を持つ方は少なくないはずです。そしてその感覚は、気のせいではありません。65万件を超えるB2B商談を分析した最新のベンチマークでは、業界全体で勝率が大きく下がっていることが示されています。本稿では、この勝率低下が個々の営業担当者の力量ではなく業界全体の地盤沈下として起きていること、そして落ちる商談に共通する「遅延」と「決裁者不在」という2つの構造を、データで確認しながら、日本のBtoB企業が取れる打ち手を整理します。

勝率は1年で29%から19%へ下がった

営業支援ツールを提供する英国Ebstaと、ゴー・トゥ・マーケット領域のコミュニティであるPavilionが共同でまとめた「2025 GTM Benchmarks」は、65万5,000件の商談、総額480億ドル規模のパイプライン、2,000名超の回答者を集計した大規模な調査です。この調査によると、B2Bの平均勝率は2024年の29%から2025年には19%へと低下しました。10ポイントの下落であり、割合でみればおよそ3分の1の勝率が失われた計算になります。(参照:Ebsta×Pavilion「2025 GTM Benchmarks」Pavilion「2025 GTM Benchmarks」

ここで大切なのは、この低下が特定の営業担当者や特定の会社だけの問題ではないという点です。数十万件の商談を横断した平均値が下がっているということは、市場全体で「商談が決まりにくくなっている」状態を意味します。景気の不透明感、購買側の慎重化、稟議に関わる人数の増加など、買い手側の事情が重なった結果と読むのが自然です。つまり、自社の勝率が下がっていても、それは現場の頑張りが足りないからとは限りません。前提となる地盤そのものが沈んでいる可能性を、まず疑う必要があります。

一方で、この前提には注記が必要です。このベンチマークの回答企業はSaaS・テック系のB2B企業が中心とみられ、購買サイクルや関与者の構造は、日本の製造業やサービス業の対面営業とは異なる部分があります。数字をそのまま日本の非SaaS営業に当てはめるのは適切ではありません。それでも、複数部署が関わり決裁に時間がかかるという購買の構造変化は、日本のBtoB営業にも共通して観測されているものです。本稿では具体的な数字を「傾向の方向」として読み、打ち手の設計に活かす立場を取ります。(参照:gradient.works「2025 GTM Benchmarks」

落ちる商談に共通する「遅延」

勝率が下がる商談には、共通する特徴があります。その筆頭が「遅延」です。同ベンチマークでは、商談が当初の想定よりも長引いた場合、勝率がおよそ113%押し下げられると報告されています。

この「113%押し下げ」という数字は少し解釈に注意がいります。これは絶対値ではなく相対指標です。基準となるのは、遅延が発生しなかった商談の勝率です。遅延した商談の勝率は、遅延しなかった商談に比べて相対的に113%低い、つまりおよそ半分以下にまで落ち込むという意味になります。たとえば遅延しない商談の勝率が20%だとすれば、遅延した商談の勝率はその半分以下の水準にまで沈む、という読み方です。商談が止まること自体が、受注の可能性を大きく削っているわけです。(参照:SaaSletter「2025 GTM Benchmarks」

なぜ遅延がここまで効くのか。商談が長引くと、買い手側では予算の見直し、担当者の異動、優先順位の入れ替え、競合の再検討といった変化が起きやすくなります。時間が経つほど「今は見送る」「来期に回す」という結論に流れやすく、検討そのものが立ち消えになることも珍しくありません。営業にとって最大の競合は他社ではなく「現状維持」と「先送り」だ、とよく言われますが、遅延はその先送りを呼び込む入り口になります。

ここで実務上やっかいなのは、遅延が「見えにくい」ことです。担当者の頭の中では「あの案件はまだ動いている」と認識されていても、最後に先方と接点を持ってから数週間が経っている、ということは珍しくありません。商談がいつ停滞に入ったのかを早く検知できるかどうかが、勝率を守る分かれ目になります。案件ごとの最終接触日や次のアクションの期日をパイプライン上で可視化し、停滞した商談に自動でアラートが出るようにしておくと、遅延を放置するリスクを下げられます。属人的な記憶に頼らず、商談の停滞をデータで捉える仕組みづくりは、商談の遅延をなくす営業最適化の支援でも中心に扱っているテーマです。

早期に決裁者を巻き込めるかどうか

遅延と並んでもう一つ、勝敗を分ける要素があります。意思決定者をいつ商談に巻き込むかです。同ベンチマークでは、商談の早い段階で意思決定者を巻き込めた場合、勝率がおよそ55%向上したと報告されています。(参照:Ebsta×Pavilion「2025 GTM Benchmarks」

この数字は、先ほどの遅延の話と裏表の関係にあります。決裁者を後回しにしたまま現場の窓口とだけ話を進めると、提案がほぼ固まった段階で初めて決裁者が登場し、そこで前提から覆る、あるいは予算の壁にぶつかって止まる、という展開になりがちです。これが遅延を生み、勝率を下げます。逆に、早い段階で意思決定者の視点を商談に取り込めていれば、本当に解くべき課題と予算感が早期に揃い、無駄な手戻りや停滞を減らせます。なお、商談に複数の関与者を束ねる「マルチスレッド」が大型案件の勝率を押し上げるという別のデータもありますが、本稿の主眼は接点の数そのものより、決裁者をどれだけ早く巻き込めるかという「タイミング」にあります。

日本の商習慣では、いきなり決裁者を引っ張り出すのは難しい場面が多いのも事実です。窓口の担当者を飛び越える動きは関係を損ねかねません。現実的なのは、窓口の担当者と協力して決裁者を巻き込む段取りを作ることです。たとえば、提案の早い段階で「最終的にこの投資を判断される方はどなたか」「その方が気にされる点は何か」を窓口と一緒に整理しておく。決裁者向けの要点をまとめた一枚を窓口に渡し、社内で説明してもらえる状態を作る。こうした地ならしを早めに行うことが、結果的に商談の停滞を防ぎます。

商談に関与している意思決定者が誰で、いつ巻き込めたのかを案件情報として記録しておくと、勝ちパターンと負けパターンの違いが後から見えるようになります。決裁者の巻き込みが遅れている商談を早期に特定し、テコ入れする運用は、属人的な勘ではなくデータに基づいて回せるようにしておくのが理想です。

数字は一部の営業に偏っている

もう一つ、このベンチマークが突きつける現実があります。売上の偏りです。同調査では、上位14%の営業担当者が全体の売上の80%を生み出していると報告されています。多くの組織で「ごく一部のトップ営業に売上が集中し、残りの大多数がノルマに届いていない」状態が起きているということです。(参照:gradient.works「2025 GTM Benchmarks」

勝率が業界全体で下がっている局面では、この偏りはさらに深刻になります。地盤が沈んでいる中でも結果を出すトップ営業は、ここまで見てきた「遅延を作らない」「決裁者を早く巻き込む」といった勝ちパターンを、意識的か無意識かを問わず実行しています。問題は、その勝ちパターンが個人の頭の中に閉じていて、組織に共有されていないことです。トップ営業のやり方を観測可能なデータ(接触の頻度、決裁者の関与時期、商談が停滞したタイミング)に置き換え、チーム全体で再現できる型にすることが、勝率の地盤沈下に抗う現実的な手立てになります。

ベテラン営業の異動や退職を控えている組織では、この「型の言語化」は急務です。勝ちパターンが属人化したままだと、その人が抜けた瞬間に組織の勝率がさらに落ちます。商談がどう進んで受注・失注に至ったのかを案件情報として残し、勝敗の要因を振り返れるようにしておくことが、再現性のある営業組織への第一歩になります。

新規だけでなく既存の拡大を見る

勝率低下への対処は、新規商談の進め方だけにとどまりません。同ベンチマークでは、既存顧客の拡大(アップセル・クロスセル)が新規売上の52%に相当する規模を生んでいると報告されています。新規獲得が厳しくなる局面ほど、すでに関係のある顧客からの追加売上が、成長を支える比重を高めます。(参照:SaaSletter「2025 GTM Benchmarks」

新規の勝率が3分の1も失われている状況では、同じ労力を新規だけに注ぎ込むのは効率が悪くなります。既存顧客は、すでに信頼関係があり、決裁者の所在も課題も見えているぶん、遅延も決裁者不在も起きにくい。本稿で見てきた「勝率を下げる構造」が相対的に小さい領域でもあります。新規偏重の営業配分を見直し、既存への再接点を計画的に作ることは、勝率低下の時代における合理的な打ち手です。ここでも、どの顧客にいつ・誰が接点を持ったかをデータで把握できているかが、拡大の機会を逃さない条件になります。

まとめ

B2Bの勝率が2024年の29%から2025年の19%へと下がったという数字は、現場の頑張り不足ではなく、市場全体の地盤沈下として受け止めるべきものです。そのうえで、落ちる商談には共通する構造があります。商談の遅延は勝率を相対的に113%押し下げ、逆に意思決定者を早期に巻き込めば勝率はおよそ55%向上します。鍵になるのは、遅延と決裁者の関与を勘や記憶ではなくデータで捉え、停滞や決裁者不在を早期に検知して手を打てる状態を作ることです。さらに、トップ営業に偏った勝ちパターンを組織の型に変え、既存顧客の拡大にも目を向ける。これらは個別の施策というより、商談の進み方を可視化する一つの仕組みの上で連動する取り組みです。

なお本稿で引用した数字はSaaS・テック系のB2B企業を中心とした海外調査に基づくため、日本の非SaaS営業にそのまま当てはまるわけではありません。数字の大小よりも「遅延と決裁者不在が勝率を下げる」という方向性を読み取り、自社の商談運用に翻訳していただくのが実践的です。自社の商談のどこで遅延が起き、どこで決裁者が抜けているのかを可視化するところから始めたい方は、無料相談からお声がけください。

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