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自動化は順番が9割。HubSpotワークフローで最初に組む3本。

作成者: 杉江 昂|Jun 18, 2026 3:26:42 PM

HubSpotを導入すると、最初にぶつかるのが「ワークフロー(自動化の設定機能)で何ができるか」ではなく「何から組めばいいか」という問いです。テンプレートも作例も無数にあり、つい欲張ってシナリオを大量に並べてしまう。ところが少人数の組織でこれをやると、誰も中身を把握できない自動化が積み上がり、かえって運用が止まります。本稿の主張は単純です。自動化は何を組むかより、どの順番で組むかで成否が決まります。最初に組むべきは、リード割り当てと通知、軽いナーチャリング、データ整備の3本。順番には理由があり、これを外すと後の2本が機能しません。McKinseyやAscend2の調査を手すりにしながら、各自動化の作り方と、つまずかない順序を整理します。

目次

  1. まず動機づけ、営業活動の3割は自動化できる
  2. 1本目、リード割り当てと即時通知
  3. 2本目、軽いリードナーチャリング
  4. 3本目、データ整備の自動化
  5. 3本を組む順番を間違えない
  6. まとめ

まず動機づけ、営業活動の3割は自動化できる

最初に確認したいのは、自動化が「あれば便利」ではなく「やらないと損」の領域だという点です。マッキンゼー・アンド・カンパニーが2020年に公表した分析「Sales automation: the key to boosting revenue and reducing costs」は、営業活動全体のうち3割超が現行技術で自動化可能だと推計しています。さらに、自動化を進めた企業ではチームのキャパシティが約20%解放され、効率の改善とコスト削減がそれぞれ10〜15%程度見込めるとしています。(参照:McKinsey「Sales automation: the key to boosting revenue and reducing costs」(2020)

2020年の分析であり、数字は範囲として受け取るのが正確です。それでも示唆は明快で、営業の手作業の一部は人がやらなくてよい、ということです。1人が複数の役割を兼ねる日本の中小・中堅組織ほど、この「解放される2割」は重く効きます。新しく人を採るのではなく、既にいる担当者の時間を、メール転記やリードの振り分けから商談そのものに振り向ける。HubSpotのワークフローは、その振り替えを実行する道具です。

ここで効率化の手段として自動化を選ぶ組織が実際に多いことも、ベンダー調査で裏づけられています。HubSpotが2026年に公表したマーケティング統計では、47%が効率化のために自動化を活用し、スケジューリングや記録、ドキュメント作成といった管理業務に93%が、データ分析やレポーティングに約92%が自動化を取り入れていると報告されています(HubSpotの自社調査である点は割り引いてご覧ください)。(参照:HubSpot「2026 State of Marketing / Marketing Statistics」(2026)

1本目、リード割り当てと即時通知

最初に組むべきは、リードを担当者へ割り当て、同時に通知とタスクを自動で立てる1本です。理由は、ここが最も「放置」が起きやすく、被害が大きいからです。少人数の組織では、フォームから来たリードの送信先が代表メールや特定の1名になっていることが多く、「誰が見るのか」が曖昧なまま翌日まで気づかれない、という事態が日常的に起きます。獲得にコストをかけたリードが、最初の数時間で目減りしていく構造です。

HubSpotのワークフローには、レコードを担当者へ均等に振り分ける割り当て(rotate record)の機能があり、割り当てと同時に担当者への通知を飛ばし、フォローのタスクを自動作成できます。地域やライフサイクルステージ(見込み客が購買のどの段階にいるかを示す区分)などの条件で分岐(if/thenブランチ)させ、「西日本のリードはAさん、それ以外はBさん」といった振り分けも組めます。(参照:HubSpot「Territory Division and Lead Rotation in HubSpot Workflows」(2020))この記事は2020年の内容のため、画面や名称は最新のヘルプで再確認することをおすすめします。

このとき大事なのは、自動化のゴールを「速さ」だけに置かないことです。リード対応は速いほどよいという原則は別稿「リード対応速度の実測調査」で扱っていますが、本稿の関心はその手前、「そもそも誰の手元に、抜けなく届くか」という配線です。担当が空中に浮かないこと、通知が確実に飛ぶこと、タスクとして残ること。この3点さえ満たせば、応答が遅れても「誰の球か」は明確になり、放置は構造的に起きにくくなります。速さは、この土台の上に後から乗せる調整項目だと考えると、組む順番を間違えません。

2本目、軽いリードナーチャリング

1本目で受け皿を作ったら、次は獲得したリードを温める軽いナーチャリング(見込み客育成)を1本組みます。ここでの方針は「最小構成」です。何十通ものシナリオを枝分かれさせる大掛かりな仕組みは、少人数では作り込んだ本人しか把握できなくなり、たいてい更新が止まります。

具体的には、資料ダウンロードや問い合わせをきっかけに、3〜5通のフォローメールを自動配信する。配信に合わせてライフサイクルステージを更新し、リードスコア(見込み客の有望度を点数化する仕組み)が一定のしきい値を超えたら、1本目の割り当てフローへ渡して営業に引き継ぐ。この「数通+ステージ更新+しきい値で引き渡し」が、最初に組むナーチャリングの過不足のない形です。

期待値も地に足をつけて設定します。ナーチャリング関連では「適格リードが数倍に増える」といった派手な数字が出回りますが、出典の古いものや前提の異なるものが多く、そのまま社内提案に使うのは危険です。本稿が拠り所にするのは、前述のMcKinseyが示した効率改善・コスト削減それぞれ10〜15%程度というレンジです。数通のメールを自動化したからといって受注が跳ね上がるわけではなく、担当者が手で送っていた初期フォローの工数が消え、抜け漏れがなくなる。この地味な改善こそが、最小構成のナーチャリングが返してくれる現実的な果実です。

3本目、データ整備の自動化

1本目と2本目を生かすには、3本目としてデータ整備の自動化が要ります。割り当ても引き渡しも、土台のデータが汚れていれば正しく動かないからです。地域で振り分けたいのに住所欄が空白なら分岐は機能せず、しきい値で引き渡したいのに会社名の表記が揺れていれば、同じ会社が別レコードとして散らばります。

この前提を、調査も裏づけています。Ascend2が2023年に公表した「The State of Marketing Automation」では、マーケターの54%が自社のマーケティングオートメーション(MA。マーケティング業務を自動化する仕組み)を最大限には活用できておらず、約3分の2がMAと他システムとの統合が不十分だと回答しました。そして過半が「良質なデータがMA成功に不可欠」と答えています。(参照:Ascend2「The State of Marketing Automation」(2023))使いこなせない原因の多くが、ツールの機能ではなく、連携とデータ品質という土台側にあることを示す結果です。

データ整備の自動化として最初に組むのは、次のような地味なルールです。

  • 入力の正規化: 電話番号やメールの形式、都道府県の表記をワークフローで揃える
  • 必須項目の補完: 業種やライフサイクルステージが空のレコードに既定値を入れる、または補完を促すタスクを立てる
  • 重複と表記ゆれの是正: 同一企業の重複レコードを検知し、会社名の表記揺れ(「(株)」「株式会社」「全角半角」など)を統一する

これらは華やかさのない自動化ですが、ここを後回しにすると1本目の振り分けが空振りし、2本目の引き渡しが詰まります。だからこそ「最後」ではなく「最初に組む3本」の一角に据えています。McKinseyの言う「3割超は自動化できる」という余地を実際に取りに行くには、まずデータが整っていなければならない、という順序です。

3本を組む順番を間違えない

最後に、なぜこの順番なのかを通しで整理します。3本は独立した機能ではなく、依存関係でつながっています。

1本目(割り当てと通知)がなければ、せっかく温めたリードの行き先がありません。2本目(ナーチャリング)がなければ、割り当てる前のリードが温まらないまま放置されます。そして3本目(データ整備)がなければ、1本目の分岐も2本目の引き渡しも、汚れたデータの上で誤作動します。つまり、受け皿を作り、温める導線を引き、その両方が乗る土台を整える、という順序そのものが設計です。先にデータ整備を完璧にしようとして動き出せない組織もありますが、それも逆効果で、まず1本目で「どのデータが実際に分岐や引き渡しに使われるか」が見えてから3本目を組むほうが、整える対象を絞れます。

少人数の組織にとって、自動化の敵は「機能の不足」ではなく「把握できない複雑さ」です。最初に組むのを3本に絞り、依存関係に沿って積むこと。それが、McKinseyの言う2割のキャパシティ解放を、絵に描いた餅にしないための現実的な道筋です。リード割り当てから引き渡し、データ整備までをHubSpot上で一気通貫に設計する作業は、HubSpotの初期構築と営業最適化の支援で最初に整える領域の一つです。どのワークフローから着手すべきか、自社の体制に合わせて見極めたい場合は、マーケティングとリード育成の支援でもご相談いただいています。

まとめ

  • McKinseyが2020年に公表した分析では、営業活動の3割超が自動化可能で、自動化によりチームのキャパシティが約20%解放され、効率改善・コスト削減がそれぞれ10〜15%程度見込めるとされています。自動化は「あれば便利」ではなく、人を増やさず時間を取り戻す手段です。
  • 最初に組むべきは3本です。1本目はリード割り当てと即時通知(rotate record+通知+タスク)で、放置を構造的に防ぎます。2本目は3〜5通の軽いナーチャリングで、ステージ更新としきい値による営業引き渡しまでを最小構成で組みます。
  • 3本目はデータ整備の自動化です。Ascend2の2023年調査では、54%がMAを使いこなせず、約3分の2が他システムとの統合不足、過半が良質なデータを成功の前提に挙げています。1本目と2本目を生かすには、土台の整備が欠かせません。
  • 順番には依存関係があります。受け皿を作り、温める導線を引き、両方が乗る土台を整える。この順序で3本に絞ることが、少人数の組織が複雑さに飲まれずに自動化を回す鍵です。

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