広告を運用してランディングページ(LP)に流入を集めているのに、出てきたコンバージョン率(CVR)が「良いのか悪いのか分からない」。上長や経営層に数字を報告するたびに、この判断基準のなさに直面する方は多いはずです。
参照できる実測データはあります。LP作成ツールを提供するUnbounce社が、自社プラットフォーム上の41,000を超えるLP、4億6,400万のユニーク訪問、5,700万件のコンバージョンを分析した「Conversion Benchmark Report」(2024年第4四半期データ、2025年3月更新)です。アンケートではなく実際のログを集計した、規模の大きなベンチマークです。(参照:Unbounce「Conversion Benchmark Report」(2025年更新))
ただし、この種のベンチマークは読み方を誤ると、目標設定や社内報告をかえって歪めます。本記事では主要な数字を確認したうえで、B2B企業がこのデータをどう扱うべきか、そして「結局、自社では何を見ればよいのか」を整理します。
全業種の中央値6.6%という数字の正体
このレポートで最もよく引用されるのが「全業種のLPのCVRの中央値は6.6%」という数字です。ここで注意したい点が2つあります。
平均ではなく中央値
6.6%は平均値ではなく中央値(データを小さい順に並べたときの真ん中の値)です。レポート自身が、ごく一部の極端に高いページが全体を引き上げてしまう「外れ値の歪み」を避けるために中央値を採用したと説明しています。(参照:Unbounce「What's a Good Average Conversion Rate for Landing Pages?」(2025年))
これは社内で他のベンチマークを引用するときにも効く視点です。「平均CVR ○%」という記事の多くは、母集団も集計方法も不明なまま数字だけが流通しています。中央値か平均か、何件のデータか、いつの数字かを確認する習慣が、報告の説得力を左右します。
B2Cを含む全業種の数字であること
もう1つ重要なのは、6.6%がEコマースなどB2Cの業種も含めた全業種の中央値だという点です。B2Bマーケティングの目標値としてそのまま使うべき数字ではありません。
B2Bに近い基準としては、同レポートの業種別データでSaaS業種の中央値が3.8%です。B2Bの商材は検討期間が長く、その場で申し込みに至る割合が構造的に低いため、全業種の数字を下回るのはむしろ普通のことです。「うちのLPは6.6%に届いていないからダメだ」と落ち込む必要はなく、B2Bであれば3.8%前後が現実的な比較対象になります。(参照:Unbounce「SaaS Conversion Rates: Industry Benchmarks」(2025年))
デバイス差は「相対8%」。読み間違えやすいポイント
レポートには「業種平均で、デスクトップはモバイルより8%高くコンバージョンする」という記述もあります。ここも誤読が起きやすい箇所です。
この8%は相対差です。仮にモバイルのCVRが5.0%なら、デスクトップはその8%増しの5.4%程度という意味で、「8ポイント低い」わけではありません。差は思っているよりずっと小さいのです。
しかも業種によって傾向は変わります。SaaS業種に限ると、モバイルの中央値6.4%に対しデスクトップは6.2%と、ほぼ同等どころかわずかにモバイルが上回ります。「B2BはどうせPCで見られるからモバイル対応は後回し」という判断は、少なくともこのデータからは支持されません。
チャネル別で突出するメール流入
流入チャネル別では、メール経由が平均19.3%と最も高いCVRを示しています(SaaS業種では中央値16.9%)。広告経由の流入とは桁が違う水準です。(参照:MarketingProfs「Landing Page Conversion Benchmarks」(2024年))
考えてみれば自然な結果です。メールが届く相手はすでに自社を知っており、何らかの接点を持った人たちです。初めて広告で出会う人より行動のハードルがはるかに低い。
ここから実務への示唆を1つ引き出すなら、「新規の広告だけがリード獲得の手段ではない」ということです。広告費の高騰が続くなか、過去の展示会名刺、資料ダウンロード、休眠顧客といった保有リストへの配信導線は、多くのB2B企業で手つかずのまま眠っています。LPのCVR改善と並行して、すでに持っている接点に再投資する優先順位は、このデータを根拠に社内へ提案できます。
ベンチマークより大事なこと。自社の定義を固定して時系列で見る
ここまで目安の数字を紹介してきましたが、本記事で最も伝えたいのは次の点です。他社ベンチマークとの比較は、参考にはなっても自社の成果判断の軸にはなりません。
理由は単純で、「コンバージョン」の定義がページごとに違うからです。資料ダウンロードをCVとするページと、無料相談の申し込みをCVとするページでは、行動のハードルがまったく異なります。前者でCVR 8%、後者で2%なら、後者のほうが事業貢献は大きいかもしれません。Unbounceのデータも、こうした多様な定義のページをまとめて集計したものです。
加えて、このデータは米国を中心とする海外のページが対象です。日本のB2Bでは、フォームに入力される項目数や商習慣(担当者が稟議のために情報収集するなど)が異なり、数字がそのまま当てはまる保証はありません。
だからこそ、実務で機能する計測設計はこうなります。
1. 自社のCV定義を固定する。「何をもって1コンバージョンと数えるか」をページごとに決め、途中で変えない。変える場合は変更点を記録する 2. 時系列で見る。先月の自社と今月の自社を比べる。改善施策の前後比較こそが、唯一信頼できる評価軸になる 3. チャネル別に分解する。全体CVRが動いたとき、流入構成の変化なのかページ改善の効果なのかを切り分けられるようにする 4. 外部ベンチマークは「桁の確認」に使う。自社の数字が0.5%なのか5%なのかという水準感の確認、および社内説明の参考値にとどめる
経営層や親会社への報告で「業界平均と比べてどうなのか」と問われたときも、「全業種の中央値はB2C込みで6.6%、B2Bに近いSaaSでは3.8%。当社は自社定義で前四半期比○%」と答えられれば、数字のリテラシーごと信頼されます。
CVR改善に着手する順番
計測の土台ができたら、改善は影響の大きい順に手を付けます。少人数のマーケティングチームでも回せる着手順をチェックリストにしました。
- オファーとCV定義の見直し: いきなり「問い合わせ」を求めていないか。資料や事例集など、ハードルの低い入口を用意する
- 流入とページの整合: 広告文で約束した内容がファーストビューにあるか。検索語とページの見出しがずれていないか
- フォームの項目数: 営業が初回接触に本当に必要な項目まで削る
- モバイル表示: 前述のとおりB2Bでもモバイル経由は無視できません。表示速度とフォームの入力しやすさを実機で確認する
- メール導線の整備: 保有リストに対する配信から、LPへの再訪導線を作る
LP自体の構造改善や制作は成果から逆算したLP・サイトの設計と制作で、その手前にある計測設計や保有リストの活用までを含むリード獲得・育成の支援で、私たちが普段支援している領域です。判断に迷う段階であれば、無料相談からお声がけください。
まとめ
Unbounceの4.1万ページの実測データは、LPのCVRの「桁」を知るうえで貴重な参照点です。ただし、全業種の中央値6.6%はB2Cを含む数字であり、B2Bの目標値にはなりません。B2Bならまず3.8%前後を水準感として持ち、そのうえで他社との比較ではなく、自社のCV定義を固定した時系列の変化を評価軸に据えることをおすすめします。
ベンチマークは目標ではなく、自社の数字を読むための物差しの1つです。物差しの目盛り(中央値か平均か、何が混ざっているか)を確かめて使える人が、社内で数字を語る信頼を積み上げていきます。