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マーケの成果が経営に伝わらない理由|KPIと財務のずれ|Respectify

作成者: 杉江 昂|Jun 15, 2026 3:59:04 PM

月次報告にリーチ、表示回数、問い合わせ件数を並べたのに、経営層の反応は薄い。質問は決まって「で、売上にどうつながるの」。手を抜いているわけでも、成果が出ていないわけでもないのに、報告のたびに防戦に回る。この苦しさの原因は、報告者の説明のうまさではなく、KPI(業務の成果を測るための重要指標)そのものが財務の言葉とずれていることにあります。本稿では、米国の調査と論考からこのずれの構造を確認したうえで、親会社や経営層への報告、上長への月次報告を「財務に近い言葉」に置き換える具体的な手順を整理します。

目次

  1. 価値を証明できているマーケティングリーダーは52%
  2. 報告が「活動の言葉」で止まっているという構造
  3. 日本の月次報告と稟議で、ずれが温存されやすい理由
  4. 親会社・経営層への報告に使うKPI変換表
  5. 上長への報告を商談・売上ベースに変える4つの手順
  6. まとめ

価値を証明できているマーケティングリーダーは52%

まず、この問題が個人の力量の話ではないことを確認します。

Gartnerが2024年に実施した調査(2024年4〜5月、シニアマーケティングリーダー378名対象)によると、マーケティングの価値を証明し、事業成果への貢献として正当な評価を得られているリーダーは52%にとどまりました。残りの半数近くは、活動はしていても、その価値を経営の言葉で示せていません。

同じ調査では、CFO(最高財務責任者)の40%、CEOの39%がマーケティングの価値に懐疑的であり、経営幹部の47%はマーケティングを投資ではなくコストと見なしている、という結果も示されています。(参照:Gartner「Gartner Survey Finds Only 52% of Senior Marketing Leaders Can Prove Marketing's Value」(2024))マーケティング部門の説明責任は米国でも長年の論点で、デューク大学などが運営する継続調査「The CMO Survey」でも、マーケティング投資の効果をどう示すかは定番の調査項目になっています。(参照:The CMO Survey(デューク大学などによる継続調査)

つまり「経営にマーケの成果が伝わらない」のは世界共通の構造問題です。そして放置するとどうなるかも、数字が示しています。Gartnerの2025年CMO支出調査では、マーケティング予算は全社売上比7.7%で頭打ちと報告されました(回答者の大半は売上10億ドル、約1,500億円超の大企業です)。予算が自然に増えない時代には、価値を証明できない部門から削られていきます。(参照:Gartner「Gartner 2025 CMO Spend Survey Reveals Marketing Budgets Have Flatlined at 7.7% of Overall Company Revenue」(2025)

報告が「活動の言葉」で止まっているという構造

2025年9月のHarvard Business Review(HBR)の論考「When CMOs and CFOs Align Their KPIs, They Deliver More Value」は、この構造を端的に指摘しています。マーケティング部門はリーチ、インプレッション、エンゲージメント率といった「活動の指標」で成果を語りがちですが、CFOや経営陣が見ているのは売上、利益、投資対効果という「財務の指標」です。両者が別の言語で話している限り、どれだけ活動量を積み上げても価値は伝わらない。だからマーケティングと財務がKPIをすり合わせ、共通言語を持つべきだ、というのが論旨です。(参照:HBR「When CMOs and CFOs Align Their KPIs, They Deliver More Value」(2025)

重要なのは、活動指標が間違っているわけではないことです。表示回数や開封率は施策改善には不可欠です。問題は、それを社内報告の主役に据えてしまうことです。経営層の問いは常に「その活動はいくらの売上の種になったのか」であり、活動指標はその問いに答える形式になっていません。

日本の月次報告と稟議で、ずれが温存されやすい理由

ここからはRespectifyの実務視点です。私たちは、この「KPIのずれ」が日本のBtoB企業ではむしろ温存されやすい構造があると考えています。

理由は、日本の月次報告や稟議の文化では「リーチ◯件、CV◯件、前月比◯%」という活動報告が、それなりに体裁が整っていれば、そのまま通ってしまうからです。報告フォーマットが一度できあがると、誰も中身の妥当性を問い直さないまま毎月更新され続けます。米国のように四半期ごとにCFOから投資対効果を詰められる緊張感が薄いぶん、活動指標を財務の言葉に翻訳する習慣が育ちません。

そして、ずれが表面化するのは決まって最悪のタイミングです。親会社からの予算見直し要請、業績悪化時のコスト削減、上長の交代。「このマーケ費用は何を生んでいるのか」と初めて正面から問われたとき、手元に活動指標しかないと、答えられないまま予算を削られます。通っている報告と、伝わっている報告は別物なのです。

親会社・経営層への報告に使うKPI変換表

では具体的にどう置き換えるか。グループ会社で親会社への月次報告を担っている方を想定し、報告しがちな活動指標と、財務に近い指標への置き換え例を表にまとめます。従業員50〜200名規模のBtoB企業であれば、このまま報告フォーマットの叩き台に使えるはずです。

報告しがちな活動指標財務に近い置き換え先経営側の問いとの対応
表示回数・リーチ主役から外し、参考値の欄へ「売上はどうなるのか」に答えられないため
問い合わせ・CV数有効商談化数、商談化率「売れる見込みのある接点か」に答える
リード総数パイプライン創出額(マーケ起点で生まれた商談の見込み金額の合計)「いくらの売上の種をまいたか」に答える
広告費の消化状況商談1件あたりの獲得コスト(広告費÷創出商談数)「その投資は割に合うか」に答える
メール開封率・クリック率マーケ施策と接点のあった商談の件数・金額「施策は受注に効いているか」に答える

ポイントは、活動指標を捨てるのではなく「主役を交代させる」ことです。報告書の1ページ目に商談・金額ベースの数字を置き、活動指標は補足資料に回す。これだけで、同じ活動内容でも報告の説得力は大きく変わります。稟議で新しい施策の予算を取りにいく際も、「過去の施策が商談をいくら生んだか」という実績の言葉で書けるようになります。

上長への報告を商談・売上ベースに変える4つの手順

次に、少人数のマーケティング担当が、営業部長や社長への報告を切り替える手順です。一度に完璧を目指す必要はありません。次の順番で進めます。

1. 施策と商談の記録をつなぐ: どの施策から来たリードがどの商談になったかを、CRM(顧客管理システム)上で商談に紐づけて残します。CRMが未整備ならスプレッドシートの商談一覧に「流入元」列を足すだけでも始められます。この記録がないと、以降のすべてが成立しません。 2. 報告の先頭を入れ替える: 翌月の報告から、最初に書く数字を「今月の商談化数と商談見込み金額」にします。CV数や表示回数は後段の補足に移します。フォーマットを変えるだけなので、上長の承認も取りやすい一手です。 3. 費用対効果を1行で添える: 例えば「広告費60万円、創出商談10件、商談1件あたり6万円(前月は7.5万円)」のように、費用と商談を1行で結びます。金額の妥当性を判断するのは上長の仕事ですが、判断できる形に整えるのは報告者にしかできません。 4. 月次は先行指標、受注は四半期で振り返る: BtoBではリードから受注まで数か月かかるのが普通です。月次で受注額だけを追うと「今月はゼロ」が続いて評価を損ねます。月次は商談化までの先行指標、受注への貢献は四半期単位、と時間軸を分けて宣言しておきます。

注意点を2つ添えます。第一に、貢献を盛らないこと。「この受注はマーケのおかげ」と過大に主張すると、営業との関係と報告自体の信頼を失います。マーケ接点の有無を事実として示すにとどめるのが長持ちする運用です。第二に、最初から厳密なアトリビューション(どの施策が成果にどれだけ貢献したかの割り当て)を目指さないこと。まずは「施策と商談がつながって見える」状態を作るのが先で、精緻化はその後で十分です。

この計測の土台づくり、つまり広告やサイトの成果を商談ベースで追える設計は、商談・売上ベースで測るリード獲得・育成の支援で私たちが最初に着手する領域です。CRM側の記録が分断していて商談まで追えない場合は、商談データを可視化する営業最適化の支援のようにデータ設計から立て直す選択肢もあります。

まとめ

  • Gartnerの2024年調査(シニアマーケティングリーダー378名)では、マーケティングの価値を証明し評価を得られているリーダーは52%。CFOの40%、CEOの39%が価値に懐疑的で、経営幹部の47%はマーケティングをコストと見なしています。
  • HBRの論考が指摘するとおり、原因は活動指標と財務指標の言語のずれです。リーチやCV数は施策改善には有効でも、経営の問いには答えられません。
  • 日本の月次報告・稟議文化では、活動報告が体裁だけで通ってしまうため、財務への翻訳習慣が育ちにくく、予算見直しの局面で初めてずれが露呈します。
  • 置き換えの軸は、CV数を有効商談化数へ、リード総数をパイプライン創出額へ、広告費を商談1件あたりの獲得コストへ。活動指標は捨てずに補足へ回します。
  • 報告の切り替えは、施策と商談の記録をつなぐことから。月次は先行指標、受注貢献は四半期と時間軸を分けるのが現実的です。

マーケティングの予算と裁量は、成果そのものではなく「成果が財務の言葉で伝わったかどうか」で決まります。来月の報告書の1ページ目を、商談と金額の数字から書き始めてみてください。計測の設計から相談したい場合は、無料相談もご利用いただけます。