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脱属人・仕組み化

営業時間の6割は売る以外に消えている。Salesforce調査と時間の取り戻し方。

営業時間の6割は売る以外に消えている。Salesforce調査と時間の取り戻し方。

「営業の人数は変わっていないのに、商談の数が増えない」。その理由を営業個人の頑張り不足に求める前に、確かめたい数字があります。Salesforceが2026年に公表した年次調査「State of Sales」第7版(世界の営業職4,050名、2025年8〜9月実施)によると、営業担当者の時間の60%は、販売以外の業務に費やされています。データの手入力、見込み客の下調べ、ツール間の行き来。売るために雇った人の時間の過半が、売る以外に消えているのです。本稿ではこの調査を入り口に、営業時間がどこへ消えるのかという構造と、手入力を自動記録に置き換えて時間を取り戻す最初の設定を整理します。

売る時間は4割しかないという調査結果

まず調査の概要です。State of Salesは、Salesforceが世界の営業担当者・営業リーダーを対象に実施している年次調査で、第7版は4,050名から回答を集めています。注意点を先に書いておくと、Salesforceは営業向けのAIエージェント(人の指示を待たずに一連の作業をこなすAI機能)を販売するベンダーであり、「AIが解決策」という結論に利害がある立場です。その前提で、時間配分に関する数字を見ます。

  • 営業担当者は勤務時間の60%を販売以外の業務に費やしている。内訳の代表例は、データの手入力、見込み客のリサーチ、ツールの切り替え
  • Z世代の営業担当に限ると、販売に使えている時間は35%にとどまる
  • 前回の第6版調査では、販売以外の業務は約70%とされており、わずかに改善したものの依然として過半を占める

「営業が売ることに集中できていない」という現場の実感は、世界共通かつ大規模な調査で裏づけられた事実だということです。そして注目したいのは、消えた時間の行き先が「商談の準備」のような前向きな仕事ではなく、手入力・下調べ・ツールの行き来という、本来は仕組みで吸収できる作業だという点です。(参照:Salesforce「State of Sales Report, 7th Edition」(2026)Salesforce「State of Sales Report 2026(調査レポート本体)」

時間が消える3つの行き先と、その正体

ここからはRespectifyの実務視点で、60%の中身を分解します。私たちは、この数字を「営業の怠慢」ではなく「仕組みの症状」として読むべきだと考えています。時間の行き先ごとに、背後にある構造は異なります。

データの手入力:CRMの設計が現場の動線に合っていない

訪問から帰って、SFA(営業支援システム)に商談メモを入れ、Excelの日報にも同じ内容を書き、週次会議用の資料にまた転記する。手入力が膨らむ会社では、ほぼ例外なくこの「二重三重の記録」が起きています。原因はCRM(顧客管理システム)の側にあります。必須項目が多すぎる、入力しても誰も見ていない、レポートが自動で組み上がらないから結局Excelに戻る。入力の負担と見返りが釣り合っていないのです。

見込み客のリサーチ:情報が個人の記憶とメールに閉じている

「この会社、前に誰か接点なかったっけ」を調べるために、過去のメールを掘り、隣の席に聞き、それでも分からず一から調べ直す。顧客との履歴が共有データベースではなく、個人の受信トレイと記憶に保存されている状態、つまり属人化の典型症状です。ベテランは自分の記憶で速く動けますが、若手は毎回ゼロから調べることになります。Z世代の販売時間が35%まで下がるという調査結果は、経験の浅い層ほど「調べる時間」に食われやすい構造と整合的です。(参照:Salesforce「State of Sales: Key Takeaways for SMBs」(2026)

ツールの切り替え:分断されたシステムはAIの足も引っ張る

同調査では、営業リーダーの51%が「分断されたシステムがAI施策を減速させている」と答えています。SFA、名刺管理、MA(マーケティングオートメーション)、チャット、表計算。ツールごとにデータが分かれていれば、人はその間を行き来して転記し、照合することになります。グループ会社であれば、親会社指定のシステムと部門ごとに入れた個別ツールが並立し、月次報告のたびに手作業の集計が発生する、という形で現れがちです。51%という数字は、この分断を放置したままではAIを足しても速くならない、という示唆として読めます。(参照:CX Today「Salesforce State of Sales 2026: AI Agents and Sales Teams」(2026)

AIエージェントへの期待と、数字の読み方

調査の後半は、この時間問題への打ち手としてのAI活用に紙幅が割かれています。54%の営業チームがすでにAIエージェントを利用しており、2027年までに約9割が導入を予定。導入済みの営業リーダーの94%が「不可欠」と答え、利用者の92%がプロスペクティング(見込み客の発掘やリスト作成)への効果を報告しています。成績上位のハイパフォーマーは、プロスペクティング用のAIエージェントを使っている割合がその他の1.7倍。完全導入できればリサーチ時間が34%、メール作成時間が36%減ると期待されており、87%は販売サイクルのどこかですでにAIを使っていると答えています。(参照:Futurum Group「AI Agents Take Center Stage: Will Sales Teams That Automate Win in 2026?」(2026)

これらの数字には、冷静な読み方が必要です。第一に、前述のとおりSalesforceは営業AIを売る側であり、導入予定や削減「期待」を含む数字は意向ベースです。第二に、1.7倍は相関であって因果ではありません。AIを使ったから成績が上がったのか、成績上位のチームほど新しい道具を試す余裕があるのかは、この調査だけでは区別できません。

それでも、時間配分の観点から導かれる順番は明確です。51%が認めるとおり、データと業務が分断されたままAIを重ねても減速します。手入力・属人情報・ツール分断という時間の漏れを先に塞ぎ、そのうえで自動化やAIを載せる。順番が逆になると、AIは散らかったデータの上で空回りします。

手入力を自動記録に置き換える最初の設定

では、どこから手をつけるか。高価なツールの追加ではなく、いま使っているCRM/MAの設定見直しから始められます。従業員50〜200名規模のBtoB企業であれば、次の3つで「記録のための時間」をまず削れます。

設定内容効果の現れ方
メール・カレンダー連携送受信メールと商談予定を顧客レコードに自動で紐づける。BCC転送や手動コピペの運用をやめる「過去のやり取り探し」が数秒になる。活動履歴が個人の受信トレイから共有資産に変わる
問い合わせ・名刺の自動取り込みフォーム経由の連絡先は自動作成し、流入元も自動付与。展示会の名刺はスキャンで一括登録リード情報の転記作業がなくなり、対応漏れも追える
入力項目の削減と自動集計商談の必須項目を本当に使う5〜10個に絞り、ステージが進んだときだけ追加入力を求める。週次報告は保存済みレポートで自動表示入力の負担が下がって記録が残るようになり、報告資料の転記が消える

効果を測る指標もシンプルで構いません。設定前に「週次報告の作成と転記にかかっている時間」を担当者ごとに測っておき、1〜2か月後に同じ物差しで比べる。上長や経営層への説明は、この差分と「販売時間60%未満」という調査数字の組み合わせで足ります。ツールを増やす稟議ではなく、分断と手作業を減らす稟議として組み立てるのが通しやすい形です。

こうした自動記録の設計は、たとえばHubSpotであれば標準機能の範囲でほぼ実現できます。Respectifyの手作業を自動記録に変える営業最適化の支援でも、新規導入より先に「手入力と転記をどこまで消せるか」の設定整理から入るケースが多くあります。そのうえでAIエージェントの活用を検討する段階は、業務へのAI実装支援の領域です。繰り返しになりますが、順番が重要です。

まとめ

  • Salesforce「State of Sales」第7版(4,050名・2025年8〜9月調査)では、営業担当者の時間の60%が手入力・リード調査・ツール切り替えなど販売以外の業務に費やされています。Z世代に限ると販売時間は35%です。
  • この60%は営業個人の怠慢ではなく、CRMの設計不全・情報の属人化・ツール分断という仕組みの症状です。51%の営業リーダーが「分断されたシステムがAI施策を減速させる」と認めています。
  • AIエージェントには54%利用・2027年までに約9割導入予定という強い期待が示されていますが、調査主体のSalesforceは営業AIベンダーであり、意向や期待を含む数字は割り引いて読む必要があります。
  • 打ち手の順番は、メール・カレンダー連携、問い合わせ・名刺の自動取り込み、入力項目の削減と自動集計。手入力と転記を消してから、自動化とAIを載せます。

営業の時間は、増やせない代わりに取り戻せます。自社の営業がどこに時間を使っているか分からない、という段階からでも整理は可能です。判断に迷う場合は、無料相談からお気軽にご相談ください。

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