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AI活用

AIが顧客対応の3割を解く時代に、成果が出る会社は何が違うのか。

顧客対応にAIを入れる、という話は、ここ1〜2年でずいぶん身近になりました。問い合わせ対応のチャットボット、メールの下書き生成、FAQの自動回答。試してみた会社も多いはずです。ところが「入れてはみたが、思ったほど効いていない」という声と、「対応の3割が自動で片づくようになった」という声が、同じテーマの中で同居しています。Salesforceが世界の顧客サービス担当者・リーダー約6,500名を対象に実施した調査「State of Service」では、すでに対応ケースの30%をAIが解決しており、2027年には50%に達すると予測されています。本稿では、同じAIを入れても成果が分かれる理由を、この調査の数字を手がかりに整理し、定型対応から着実に成果を出すための順番を考えます。

対応ケースの3割をAIが解く、という現在地

まず調査の出どころを押さえておきます。この数字は、Salesforceがグローバルでカスタマーサービスのプロフェッショナルとリーダーズ(約6,500名)に行った調査に基づくものです。顧客対応の現場では、すでに寄せられる対応ケースの30%をAIが解決しており、同社はこの比率が2027年には50%に達すると予測しています。あわせて、AIを活用することで定型的な対応業務が20%減り、これは担当者1人あたり週におよそ4時間に相当するとされています。(参照:Salesforce「State of Service」(2025)

読むうえで注意したい点が2つあります。1つは、これがSalesforce自身による調査であることです。同社はAI搭載のカスタマーサービス製品を提供しており、AIの有効性を示す結果と利害が整合する立場にあります。数字はそのまま額面で受け取るのではなく、傾向を示すものとして扱うのが妥当です。CX Todayなどの独立した業界メディアも同調査の主要な結論を取り上げており、「AIが定型対応を肩代わりし、担当者をより複雑な対応に振り向ける」という方向性自体は、複数の観測で一致しています。(参照:CX Today「Salesforce State of Service 2025」(2025)

もう1つは、国別・地域別の数字との混同です。同種の調査ではインドなど特定国に絞った別集計が出回ることがありますが、本稿が扱うのはグローバル全体(約6,500名)の数字です。「インドでは○○%」といった国別の数値とは別物として読んでください。

ここで大事なのは、30%や週4時間という数字の大きさそのものよりも、「AIが片づけているのはどの種類の業務か」という点です。AIが解いているのは、回答が定型化できる問い合わせ、手順が決まっている処理、過去の事例から答えを引ける質問です。逆に言えば、まだ人が担うべき複雑な交渉や例外対応はAIの守備範囲の外にあります。成果を出している会社は、この線引きを最初から意識して、AIに任せる領域を定型業務に絞り込んでいます。

成果が出る会社は、AIの前にデータをつないでいる

この調査でもう1つ見逃せないのが、AI導入の成否を分ける要因です。Salesforceの調査によれば、チャネルをまたいでデータを統合している企業は、自社のAI実装を「非常に成功している」と評価する確率が、そうでない企業の約1.4倍でした。(参照:Salesforce「State of Service」(2025)

ここで言うチャネルとは、電話・メール・チャット・問い合わせフォーム・SNSといった、顧客との接点のことです。多くの会社では、これらの履歴がそれぞれ別のツールに分かれて記録されています。電話の内容は担当者のメモに、メールはメールソフトに、チャットはチャットツールに、というように散らばっているわけです。この状態のままAIを乗せても、AIは目の前のチャネルの情報しか見られません。同じ顧客が3日前に電話で何を言い、先週どんなメールを送ってきたかを踏まえた回答ができないのです。

統合データを持つ企業のAIが成果を出しやすいのは、AIが顧客の状況を一貫して把握できるからです。逆に、データが分断されたままAIだけを高機能化しても、AIは断片的な情報をもとに答えるしかなく、的外れな回答や「結局そこは人に聞いてください」という応対に終わります。1.4倍という差は、AIの性能差ではなく、AIに与えている情報の差から生まれています。つまり、AI導入で成果が出るかどうかは、AIを選ぶ前のデータ整備の段階でかなり決まっている、ということです。

この「AIの前にデータをつなぐ」という順番は、顧客対応に限った話ではありません。営業・マーケティングを含め、顧客接点のデータをCRM(顧客関係管理ツール)を中心に集約しておくことが、後から乗せるAIの効きを左右します。問い合わせ対応の履歴と、その顧客の商談状況や過去の取引が同じ基盤で見える状態をつくる、という営業最適化・パイプライン管理の支援の延長線上に、効くAIの土台があると考えると整理しやすいはずです。

日本の現場で、この数字をどう割り引いて読むか

ここからはRespectifyの実務視点です。まず、この調査をそのまま日本の現場に当てはめる前に、いくつか割り引いて読む必要があります。

調査はグローバルが対象で、日本特有の事情は反映されていません。日本のBtoBの顧客対応は、電話と対面のウェイトが依然として高く、丁寧な文面や例外対応への期待値も高い傾向があります。「対応の30%をAIが解く」という比率を、日本の自社にそのまま適用するのは早計です。とはいえ、問い合わせの中に定型的なものが一定割合あること、その定型部分なら自動化の余地があること、この構造自体は日本の現場でも変わりません。比率の大小ではなく、「定型と非定型を分けて、定型をAIに寄せる」という考え方を持ち帰るのが現実的です。

グループ会社や子会社で顧客対応を担っている場合、この「データ統合がAIの効きを決める」という発見はとくに重みを持ちます。親会社のシステム、自社で導入した問い合わせ管理ツール、営業が使っているSFAが別々に動いていると、顧客の全体像がどこにも揃っていません。AI活用を経営から求められたとき、いきなりAIツールを探すのではなく、「まず顧客接点のデータをどこに集めるか」を先に決めることが、塩漬けを避ける分かれ目になります。これは、過去にツールを乱立させてデータが分断した経験のある現場ほど、痛感しているはずの論点です。

一方、少人数で問い合わせ対応とマーケティングを兼務しているような現場では、「データ統合」と聞くと大がかりに感じるかもしれません。しかし、ここで必要なのは全社一斉の基盤刷新ではありません。まずは問い合わせ対応の履歴と顧客情報が1か所で見える、という最小限の状態をつくることが出発点です。

定型対応から始めて、週4時間を生む順番

では、具体的にどこから手をつけるか。週4時間という数字を自社で現実にするための順番を、4段階で整理します。

  1. 問い合わせを分類して、定型の割合を把握する。直近1〜3か月の問い合わせを見返し、「同じような質問・処理が繰り返されているもの」と「個別判断が要るもの」に分けます。前者の割合が、AIで自動化を狙える上限の目安になります。ここを測らずに「AIで効率化」と言っても、効果の見込みが立ちません。
  2. データの置き場所を1か所に決める。問い合わせ履歴と顧客情報がばらばらのツールに分かれているなら、まずどこに集約するかを決めます。完璧な統合を目指す必要はなく、対応にあたって参照する情報が1画面で見える状態をつくることが先決です。Salesforceの調査が示す1.4倍の差は、この段階の手当てに対応します。
  3. 定型業務からAIを当てる。FAQへの自動回答、よくある問い合わせへの一次対応、回答文の下書き生成など、回答が定型化できる業務にAIを限定して入れます。最初から複雑な対応をAIに任せようとすると、誤った回答のリスクが高まり、かえって人の確認工数が増えます。
  4. 削減した時間の使い道を決めておく。定型対応が減って生まれた時間を、何に充てるかを事前に決めます。複雑な顧客対応、対応品質の改善、あるいは別業務への振り向け。ここを決めておかないと、「楽にはなったが成果が見えない」という評価で終わり、次の投資につながりません。

この4段階のうち、多くの会社がつまずくのは2の「データの置き場所」です。1と3は比較的着手しやすい一方、データが分断されたまま3だけを進めてしまい、AIが断片情報で答える状態に陥る。これが「入れたのに効かない」の典型です。どの業務にAIを当て、その手前で何のデータをどう揃えるか。この見立てづくりは業務へのAI実装支援で扱っている領域ですので、自社のケースに当てはめて整理したい場合は参照してください。

まとめ

  • Salesforceが世界の顧客サービス担当者・リーダー約6,500名に実施した調査では、対応ケースの30%をすでにAIが解決しており、2027年には50%に達すると予測されています。AI活用で定型対応は20%減り、担当者1人あたり週およそ4時間に相当します(Salesforce自社調査のため傾向として読み、国別の数字とは区別する)。
  • 成果の分かれ目はAIの性能ではなくデータです。チャネルをまたいでデータを統合している企業は、AI実装を「非常に成功」と評価する確率が約1.4倍でした。AIに与える情報の差が成果の差を生んでいます。
  • 日本の現場では比率をそのまま当てはめず、「定型と非定型を分け、定型をAIに寄せる」という考え方を持ち帰るのが現実的です。データ統合は全社刷新でなく、問い合わせ履歴と顧客情報が1画面で見える最小限の状態から始められます。
  • 着手の順番は、定型の割合を測る、データの置き場所を1か所に決める、定型業務からAIを当てる、削減した時間の使い道を決める、の4段階。多くの会社がつまずく「データの置き場所」を先に手当てすることが、週4時間を現実にする鍵になります。

顧客対応のどこにAIを当て、その前にどのデータをどう揃えるか。自社のケースで順番を整理したい場合は、無料相談で現状を伺いながら一緒に考えます。

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