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導入したツールの半分しか使われていない。活用率49%と棚卸しの始め方。

導入したツールの半分しか使われていない。活用率49%と棚卸しの始め方。

MAを入れたのにフォームとメール配信しか使っていない。前任者が設定したCRMのワークフローが、何のために動いているのか誰も説明できない。心当たりのある方は少なくないはずです。実はこれは個社の運用力の問題ではなく、世界共通の現象であることが調査で示されています。Gartnerの2025年マーケティングテクノロジー調査によると、マーケティング部門が自社ツール群の機能を活用できている割合は49%。導入した機能の半分は、使われないまま費用だけが発生している計算です。本稿では、この「半分しか使われない」現象の構造と、日本の商習慣がそれをどう増幅するか、そして明日から始められる棚卸しの手順を整理します。

機能の半分が眠っているという調査結果

まず言葉の整理から始めます。マーテック(マーケティングテクノロジー)とは、MA・CRM・広告運用・アクセス解析など、マーケティング業務を支えるツール群の総称です。複数のツールを組み合わせた一式を「スタック」と呼びますが、要するに「自社が契約しているマーケ関連ツールの全体」と捉えて差し支えありません。

Gartnerが2025年10月に公表した「2025 Marketing Technology Survey」によると、マーケティング組織がマーテックスタックの機能を活用できている割合(活用率)は49%でした。契約しているツールの機能のうち、半分強しか実際の業務で使われていないということです。(参照:Gartner「Marketing Technology Strategy & Management」

さらに同調査は、マーテック活用の「ハイパフォーマー」、すなわち戦略目標を達成し、かつマーテック投資のROI(投資対効果)がプラスになっている組織は、全体のわずか15%にとどまると報告しています。裏を返せば、85%の組織は「目標達成」と「投資回収」のどちらか、あるいは両方を満たせていません。ツールを入れたのに成果が見えないという感覚は、数字の上でも多数派なのです。

活用率は一度33%まで下がっていた

49%という数字は、単年で見るか経年で見るかで意味が変わります。

Gartnerはこのテーマで継続的に調査を行っており、その推移を年次で並べると、2020年は58%、2022年は42%、2023年は33%、そして2025年は49%となっています(年により指標の表現や調査設計が異なるため、厳密な連続比較ではなく「Gartnerの継続調査による推移」として読む必要があります)。2023年の33%は「契約した機能の3分の2が使われていない」という衝撃的な数字として、MarTech.orgやCMSWireなど海外の業界メディアでも大きく取り上げられました。MarTech.orgの報道によれば、同じ期間にマーテックへの支出は2020年の153億ドルから2023年の236億ドルへと増え続けており、「支出は増えるのに活用は下がる」という逆行が起きていたことになります。(参照:MarTech.org「Marketers are only using one-third of their stack's capability」(2023)CMSWire「Beyond the Mirage: A Data-Driven Blueprint to Tame Martech Complexity」(2025)

2025年の49%は、そこからの回復と読むこともできます。ただし回復してなお「半分」です。ツールを増やす意思決定は簡単に通るのに、使いこなす体制への投資は後回しになる。この構造自体は変わっていません。

AIを足しても、使われないものは使われない

「活用が進まないならAIで自動化すればいい」という発想も、現時点では楽観的すぎるようです。

同じGartnerの2025年調査では、マーテック領域のリーダーの81%がベンダー提供のAIエージェント(ツールに組み込まれた、業務を自律的に処理するAI機能)をすでに試験導入しています。ところがそのうち45%が、「約束されたビジネス成果に対して期待を下回った」と回答しました。試した組織の半数近くが期待外れだったと答えている、ということです。(参照:Gartner「Survey Finds 45% of Martech Leaders Say Existing Vendor-Offered AI Agents Fail to Meet Their Expectations」(2025)

これは「AIが使えない」という話ではありません。土台となるツールの設定やデータが整っていない状態でAI機能を重ねても、成果には届きにくいという話です。機能の半分が眠っているスタックの上にAIエージェントを載せるのは、整理されていない倉庫に高性能なロボットを導入するようなものです。順番として、先に棚卸しが要ります。

日本の現場で活用率が下がる構造

ここからはRespectifyの実務視点です。海外調査が示す「半分しか使われない」現象は、日本のBtoB企業ではさらに増幅されやすい構造があると私たちは考えています。支援の現場でよく出会うのは、次の3つのパターンです。

  • 前任者の退職で「設定の意図」が失われる: スコアリングやワークフローは動いているのに、なぜその条件なのか誰も知らない。怖くて触れないまま塩漬けになり、実態と合わない自動処理が走り続けます。ツールの設定が個人の暗黙知のまま、ドキュメントとして残らないことが根本原因です。
  • 年契約・自動更新の商習慣: 国内SaaSの多くは年契約で、解約意思を更新日の1〜3か月前までに通知する契約形態が一般的です。使っていないことに気づいたときには更新済みで、「あと1年は払うのだから置いておこう」と判断が先送りされます。
  • 補助金でツールだけが入った現場: IT導入補助金などを使い、導入費用のハードルが下がった状態でツールが入ったものの、運用設計や定着の工数は予算化されていなかった、というケースです。導入がゴールになり、活用の責任者が決まらないまま月日が経ちます。

3つに共通するのは、「契約」「設定」「利用実態」の3つの情報が、別々の場所にバラバラに存在していることです。契約情報は経理に、設定の意図は退職した前任者の頭の中に、利用実態はツールのログの中に。誰も全体を見ていないので、活用率が下がっても誰の課題にもなりません。

棚卸しは「契約・設定・利用実態」の3列で始める

そこで私たちが最初におすすめするのは、ツールごとに3列の表を作る棚卸しです。高度な分析は不要で、スプレッドシートで十分です。従業員50〜200名規模のBtoB企業なら、対象ツールは多くても10〜20個程度。最初の一覧化は半日から1日で終わります。

確認すること記入例
契約月額/年額、プラン、席数、更新日、自動更新の有無、解約通知期限年額60万円、10席、更新は3月末、通知期限は1月末
設定有効になっている機能、自動化の内容、誰が何のために設定したかスコアリング稼働中、設定者は前任者、意図は不明
利用実態直近90日のログイン者数、実際に使われている機能、業務での役割ログインは2名のみ、フォームとメール配信だけ使用

3列を埋めると、ギャップの種類ごとに打ち手が見えてきます。

  • 契約にあるが利用実態にない: 解約・プラン縮小・席数削減の候補です。更新日と解約通知期限から逆算し、更新の2〜3か月前に判断する運用カレンダーを作ります。
  • 設定はあるが意図が不明: まず止めずにドキュメント化します。「この自動化は何を判定して何をしているか」を1本ずつ言語化するだけで、前任者の暗黙知が組織の資産に変わります。
  • 利用されているが設定が古い: 現在の業務に合わせた改修候補です。使われている機能から直すのが、効果を実感しやすい順番です。

この3列目までを自社で埋めきれない、特にCRMやMAの設定の解読でつまずく場合は、外部の手を借りる選択肢もあります。RespectifyでもCRMの設定を業務に合わせ直す営業最適化の支援の入り口として、既存設定の棚卸しと再設計から入るケースが多くあります。

ハイパフォーマー15%から逆算する、少人数チームの優先順位

Gartnerの定義に立ち返ると、ハイパフォーマーの条件は「戦略目標の達成」と「ROIがプラス」の2つでした。この定義から逆算すると、少人数チームが取り組むべき順番が見えてきます。マーケ担当1〜2名の体制でも、次の順なら現実的です。

1. 測れる状態を先につくる: ROIを語るには、ツールの費用と、ツール経由で生まれた商談・売上が結びついている必要があります。全機能の活用より先に、リード獲得から商談化までの記録が1本につながる最低限の導線を整えます。 2. 使う機能を戦略目標から絞る: 「今期の目標は有効リード数」なら、まず使い込むのはフォーム・LP・流入計測です。目標に直結しない機能は、堂々と「今は使わない」と決めます。半分しか使わないこと自体は問題ではなく、どの半分かを選べていないことが問題です。 3. 新しいツールの追加より、既存の設定改善を優先する: 経年データが示すとおり、支出を増やしても活用率は上がりませんでした。追加投資の前に、いま契約しているものの設定を現在の業務に合わせ直すほうが、費用ゼロで効果が出ます。 4. AIは整った業務の上に載せる: 期待未達45%という数字を踏まえ、AI機能の導入は「すでに回っている業務の効率化」から始めます。回っていない業務をAIで回そうとすると、期待外れの45%側に入りやすくなります。

この優先順位は、広告運用やリード獲得の成果を経営層に説明したい場面でも同じ構造です。施策と計測の整え方はマーケツールを使いこなすリード獲得・育成の支援の領域として、別記事でも順次扱っていきます。

まとめ

  • Gartnerの2025年調査では、マーテックスタックの機能活用率は49%。戦略目標達成とROIプラスを両立する組織は15%にとどまります。
  • Gartnerの継続調査による推移では、活用率は2020年58%、2022年42%、2023年33%、2025年49%と動いており、支出増が活用増につながらないことが繰り返し示されています。
  • AIエージェントは81%が試験導入済みの一方、45%が期待未達と回答。土台の整理より先にAIを足しても成果には届きにくい状況です。
  • 日本では前任者退職による設定意図の喪失、年契約・自動更新、補助金起点の導入が「使われないツール」を増幅します。
  • 打ち手の起点は「契約・設定・利用実態」の3列の棚卸しです。ギャップの種類ごとに、解約判断・ドキュメント化・設定改修へ振り分けます。

ツールを増やす前に、いまあるものの半分を取り戻す。その第一歩は、3列の表を1枚作ることです。自社のスタックのどこから手を付けるべきか迷う場合は、無料相談からお気軽にご相談ください。

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