Home/Journal/Article

営業

インサイドセールスとは。フィールドセールスとの違い、SDR・BDRの役割、少人数組織の始め方。

インサイドセールスとは。フィールドセールスとの違い、SDR・BDRの役割、少人数組織の始め方。

「インサイドセールス」という言葉は、ここ数年で営業組織の用語として広く使われるようになりました。一方で、その役割や、フィールドセールス(外勤営業)との分担、SDRとBDRの違いを問われると、社内で答えが揃わない会社も少なくありません。テレアポ担当の言い換えだと捉えている現場もあれば、マーケティングの一部門だと整理している会社もあります。本稿では、インサイドセールスを「職種」ではなく「組織設計」として捉え直し、定義・役割分担・日本の一次調査が示す実態・少人数組織での始め方を順に整理します。なお本記事は、HubSpot Japanの意識調査や、HubSpot公式ブログの定義をベンダー調査・ベンダー解説として明示したうえで参照しています。

インサイドセールスとは、非対面で見込み客と関係を築く営業の総称

インサイドセールスは、訪問せずに電話・メール・オンライン会議などで見込み客と関係を築き、商談につなげる営業活動の総称です。HubSpotのベンダー解説では、「非対面で信頼関係を構築する営業手法」と定義されています。テレアポのように一度きりの接触で終わらせるのではなく、相手の検討段階に合わせて中長期で接点を継続する点が特徴です。(参照:HubSpot公式ブログ「インサイドセールスとは?」(2025)

注目されている背景には、買い手側の購買行動の変化があります。HubSpot Japanが2024年2月に公表した「日本の営業に関する意識・実態調査2024」(マクロミルへ委託、売り手1,545名・買い手515名、2023年11月実施。ベンダー調査)によれば、買い手が「訪問営業を選好する」と答えた割合は53.3%で、前回の58.3%から5ポイント低下しました。一方で「対面・非対面のどちらでも柔軟に対応してもらえればよい」と答えた買い手は38.8%にのぼります。半数強は依然として訪問を望むものの、非対面で十分という買い手が4割近くを占める構造に変わってきている、と読めます。(参照:HubSpot Japan「日本の営業に関する意識・実態調査2024」(2024)

同調査では売り手側の課題として、「顧客接触に使えている時間は業務全体の54%」「CRMを導入している企業は36.2%」「生成AIを実利用している営業は21.1%」といった数字も示されています。営業の半分近くの時間が顧客接触以外に費やされている現状をふまえると、訪問前提の営業から、限られた接触時間をどう設計するかへ重心が移るのは自然な流れです。インサイドセールスは、その設計を担う機能として位置づけられます。

フィールドセールスとの違いは、接点手段ではなく担当フェーズで読む

インサイドセールスとフィールドセールスの違いは、「電話か訪問か」という接点手段の違いとして語られがちです。しかし実務で見ると、両者の本質的な違いは担当する商談フェーズと評価指標にあります。

HubSpotのベンダー解説では、両者の分業を次のように整理しています。インサイドセールスは初回接触から商談設定までを担い、フィールドセールスは商談以降の提案・クロージングを担う。BtoBの検討プロセスを前半(見込み客の特定と関心喚起)と後半(提案と意思決定)に分け、それぞれの専門性を分けて配置する考え方です。(参照:HubSpot公式ブログ「インサイドセールスとは?」(2025)

この分業を成立させる前提は、評価指標の分離です。インサイドセールスが追うのは「有効商談数」「商談化率」など、フィールドセールスへの引き渡し品質を測る指標です。受注金額そのものはフィールドセールスのKPIに紐づきます。両者を同じ受注金額で評価すると、インサイドセールスがクロージング寄りに動いてしまい、見込みの薄い案件を引き渡す動機が消えてしまいます。

なお、接点手段は両者で重なる部分もあります。フィールドセールスがオンライン会議で商談することは増えましたし、インサイドセールスが必要に応じて訪問同行する組織もあります。手段ではなく担当フェーズで読み解くと、自社のどこに分業のラインを引くかの議論がしやすくなります。リードからフィールドセールスへの引き渡しが滞っているケースの構造的な要因は別稿「マーケティングと営業のリード定義をそろえる」でも扱っているので、引き渡し品質に課題感がある場合はあわせてご覧ください。

SDRとBDRは、反響型と新規開拓型の分業で考える

インサイドセールスの中でも、近年はSDR(Sales Development Representative)とBDR(Business Development Representative)という細分化が用いられるようになりました。両者の違いを、ターゲット・形態・手段の3軸で整理したのがHubSpotのベンダー解説です。

同解説によれば、SDRは反響型(インバウンド)で、Webサイトの問い合わせや資料請求から発生した見込み客に応対し、中小企業向けで件数を多くこなす傾向があります。BDRは新規開拓型(アウトバウンド)で、こちらから狙いを定めた企業にアプローチし、大企業向けで1社あたりの工数を厚くかける傾向があります。手段としても、SDRはメール・電話・チャットなど反響に対する応答が中心、BDRは事前のリサーチをもとにした個別アプローチが中心です。(参照:HubSpot公式ブログ「インサイドセールスのBDRとは?SDRとの違い」(2025)

ここからはRespectifyの実務視点です。SDRとBDRを最初から別チームに分けられるのは、ある程度の人員を確保できる組織に限られます。従業員50〜200名規模のBtoB企業では、1人のインサイドセールス担当がSDRとBDRを兼任するか、午前はSDR業務・午後はBDR業務といった時間分割で運用するのが現実的です。兼任で立ち上げる場合、最初に決めておきたいのは「1日のうち反響対応にどれだけ上限を設けるか」です。反響対応は緊急性が見えやすいため、放っておくとアウトバウンドの時間が削られ、新規開拓の母数が積み上がりません。半年から1年たって体制を分ける段階で、新規開拓のリストとシナリオが揃っていない状況を避けるためにも、最初から時間配分を明示的に決めておく価値があります。

日本の導入実態は、SaaS中心の普及と「兼任7名前後」の現場

日本ではどの程度インサイドセールスが普及しているのか、複数の一次調査からスナップショットを描いておきます。

スマートキャンプが2025年に公表した「インサイドセールス業界レポート2024-2025」では、SaaS企業の約98%がインサイドセールスを導入していると報告されています。ここで重要なのは、この98%という数字は調査対象がSaaS企業に限定されている点です。日本の全BtoB企業の導入率がこの水準だと読むのは誤りで、SaaS業界での標準装備化が進んでいる、というのが正しい読み方です。(参照:スマートキャンプ「インサイドセールス業界レポート2024-2025」(2025)

現場の業務量については、immedioが2025年に公表した「インサイドセールス白書2025」(インサイドセールスを主業務とする202名対象、2024年12月〜2025年1月実施)が具体的な数字を出しています。1日平均の架電件数は34件、1リードへの追客回数は平均5.1回、インサイドセールス組織の平均人数は7.0名、メンバーの平均社会人歴は9.5年でした。多くの組織が10名に満たない少人数体制で運用しており、現場メンバーは新卒ではなく一定の社会人経験を積んだ層が中心であることがわかります。(参照:immedio「インサイドセールス白書2025」(2025)

加えて同調査は、インサイドセールス担当者の「現在の業務を続けたい期間」が平均12.8か月であることも示しています。約1年でキャリアの次を考える層が中心、ということです。この数字は、後述する課題のうちキャリア設計の問題と直結します。

導入のメリットと、見落とされがちな課題

インサイドセールスを導入する代表的なメリットは、訪問前提の営業と比べて1日あたりの接点数を増やせること、見込み度合いの低い段階から長期で関係を維持できること、そして接点の履歴を記録しやすく属人化を抑えられることです。HubSpot Japanの調査が示した「顧客接触に使えている時間は54%」という現状に対し、移動時間を圧縮できるインサイドセールスは時間効率の改善余地が大きい職種です。

一方、ここからはRespectifyの実務視点として、見落とされがちな課題を3つ挙げておきます。

1つ目はキャリア設計の問題です。前述のとおり、インサイドセールス担当者の継続希望期間は平均12.8か月。新規参入時の魅力は高いものの、定着の設計が弱いと、ノウハウが組織に蓄積されないまま入れ替わる構造になります。1〜2年でフィールドセールスに移るキャリアパスを最初に提示するか、インサイドセールス内でSDRからBDR、さらにマネジメントへ進む道筋を引くか、明示する必要があります。

2つ目はナーチャリング(中長期の関係維持)に使えるコンテンツの不足です。インサイドセールスは継続接点を前提とする職種ですが、毎月の接点で渡せる事例・ホワイトペーパー・ウェビナーなどの素材がないと、結局は「いかがでしょうか」の追客電話に終始することになります。マーケティング側のコンテンツ生産と歩調を合わせて初めて、インサイドセールスは機能します。

3つ目は成果計測の不可視化です。CRMが整っていない組織でインサイドセールスを立ち上げると、誰が何件接点を持ち、そのうち何件が商談化し、どの活動がどの受注につながったかが追えません。HubSpot Japanの調査でCRM導入率は36.2%でした。3社に2社はCRMを持たないまま、あるいは部分的にしか活用しないまま営業活動を進めているということです。この土台がない状態でインサイドセールスを増員しても、活動量は増えるのに成果が説明できない状態に陥りやすくなります。

リード対応の速度や定義の問題は、別稿「リード対応速度の実測調査と機会損失の構造」「マーケティング・営業のリード定義をそろえる」でも扱っています。

少人数でも回せる、インサイドセールスの始め方5ステップ

最後に、従業員50〜200名規模で1〜3名からインサイドセールスを始める場合の現実的な手順を5ステップで整理します。

第1に、目的と引き渡し定義の合意です。インサイドセールスを「何のために置くか」を、経営・営業・マーケティングの3者で言語化します。新規商談数を増やすのか、休眠リードの掘り起こしを担うのか、既存顧客の継続接点を強化するのか。目的によってKPIも体制も変わります。同時に、フィールドセールスへの引き渡し条件(BANTのどこまで満たしたら引き渡すか、など)を文章で決めておきます。

第2に、KPIの段階設計です。立ち上げ初期から商談化率や受注金額で評価すると、メンバーが疲弊します。初期3か月は活動量(架電数・メール送信数・接続率)、次の3か月は質指標(有効会話数・次回アポ獲得数)、半年以降に商談化数・商談化率を加える、といった段階設計が現実的です。immedioの調査が示す「架電34件/日・追客5.1回」は、平均的な負荷感の目安として参考になります。

第3に、シナリオとリストの最小構成です。初期は「反響対応用」「休眠リード再接点用」「アウトバウンド新規開拓用」の3つのシナリオがあれば回せます。リストも、CRM上で「3か月以内に問い合わせ」「半年以上接点なし」「未接点のターゲット企業」の3セグメントから始めれば十分です。最初から精緻なターゲティングを目指すよりも、回しながら改善するほうが立ち上がりは速くなります。

第4に、ツール選定の優先順位です。優先順位は、CRM、活動記録の自動化、架電・日程調整の順です。最初にCRM(顧客管理システム)の土台がないと、後から入れたツールが活動データを集約できません。次に、通話・メール・面談予約が自動でCRMに記録される仕組みを入れます。最後に、効率化ツールとして架電システムや日程調整ページを足します。逆の順序で導入すると、データがばらつく原因になります。

第5に、引き渡しの仕組み化です。インサイドセールスからフィールドセールスへの引き渡しは、口頭やSlack(チャットツール)で「お願いします」と伝えるだけでは破綻します。引き渡し時に共有すべき項目(顧客の課題・予算感・意思決定者・次回アクション)をCRM上のテンプレートに固定し、フィールドセールスが受け取った瞬間にすべての情報が揃っている状態を作ります。Respectifyでは、この引き渡しの設計をCRMを軸にした営業最適化の支援の中で最初に整える領域として扱っています。

なお、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの3者間の連携設計については、別稿「セールスとマーケティングの連携を設計する」もあわせて参照してください。

まとめ。インサイドセールスは「職種」ではなく「組織設計」

  • インサイドセールスは非対面で見込み客と関係を築く営業の総称で、テレアポの言い換えではありません。買い手の訪問選好が53.3%まで低下し、柔軟対応でよいと答える層が38.8%にのぼる構造の変化が、注目の背景にあります(HubSpot Japanのベンダー調査)。
  • フィールドセールスとの違いは接点手段ではなく担当フェーズです。インサイドセールスは初回〜商談設定、フィールドセールスは商談以降。評価指標を分離して初めて分業が機能します。
  • SDRは反響型・中小企業向け、BDRは新規開拓型・大企業向けという整理が一般的ですが、少人数組織では兼任が現実的で、最初に時間配分を決めておくことが重要です。
  • 日本の現場ではSaaS業界での導入は約98%(SaaS限定の母集団)と高い一方、現場の組織規模は平均7.0名、1日34件の架電・5.1回の追客、継続希望期間は平均12.8か月です。
  • 導入の課題はキャリア設計、ナーチャリングコンテンツの不足、成果計測の不可視化の3つ。CRM導入率36.2%という土台の薄さが、成果計測を難しくしています。
  • 少人数での立ち上げは、目的と引き渡し定義の合意、KPIの段階設計、シナリオ3本とリスト3セグメントの最小構成、CRM起点のツール選定、引き渡しの仕組み化の5ステップで進めるのが現実的です。

インサイドセールスは、特定の職種を採用すれば動き出すものではなく、マーケティング・営業・CRMを含む組織設計の一部として置かれて初めて成果が出ます。自社の体制を一度整理したい方は、無料相談からお気軽にお声がけください。

← 記事一覧へ戻る Respectify Journal
Let's Talk

うちの場合は?を、30分で。

記事のテーマをご自身の事業に当てはめた相談も歓迎です。無理な営業はしません。

平日 9:30–18:00/原則1営業日以内に返信